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【教採⑨】小論文 ⑵書き方・構成

この記事では,教員採用試験における小論文の書き方・構成について,紹介しています。

 

※このブログが初めての方は,必ず【教採①】の記事(【教採①】はじめに(重要) - Moment)をお読みください 。

※前回の記事:【教採⑧】小論文 ⑴最重要ポイント - Moment

 

 

前回の記事では,小論文を書く上での最重要ポイントを3つ示しました。

 

① 問題に対して正確に回答する

② 評論家ではなく、教師(教育の実践者)として書く

③ 実現可能なものを書く(仮に一見難しそうでも、実現するための術を示す)

 

これらを意識しながら,一本書けたでしょうか?

今回は,小論文の具体的な書き方や構成についてみていきたいと思います。

今年度(平成30年度)の東京都の小論文の問題が説明するのにとても都合が良いので,以下引用します。なお東京都は,A問題(主に学習指導に関して)とB問題(主に生徒指導に関して)という2種類の問題があり,どちらか選択となっています。今回引用するのはA問題です。

 

 年度初めの職員会議で,教務主任から,「昨年度,『自分の考えを的確に表現する。』を重点事項に学習指導に取り組んだ結果,学習に関する生徒アンケートにおいて『自分の考えを表現できた。』の項目で『あてはまる』と回答した生徒が一昨年度に比べて増えました。しかし,『自分の考えとは異なる考えについて理解することができた。』の項目で『あてはまらない』と回答した生徒が多いことが分かりました。また,各教科主任からは,『自分の考えを根拠とともに伝えたり,他者の考えに根拠をもって反論したりすることが苦手な生徒が多い。』という報告を受けています。そこで,今年度,各教科の指導において,『他者の考えを理解し,自分の考えを広げ深めることができる力を育てる。』を重点事項にしたいと思います。』と報告があった。

 職員会議終了後,教務主任からあなたに,「先ほどの重点事項に基づいて,どのように学習指導に取り組んでいくか,具体的に考える必要がありますね。」と話があった。

 

問題

 教務主任の発言を受けて,あなたならどのように学習指導に取り組んでいくか,志望する校種と教科等に即して,具体的な方策を二つ挙げ,それぞれ10行(350字)程度で述べなさい。その際,その方策を考える上での問題意識やまとめを明確に書き,全体で30行(1050字)以内で述べなさい。ただし,26行(910字)を超えること。

 

問題の設定(一つ目の引用)については,次の記事で詳しく見るとして,今回は「問題」(二つ目の引用)に着目して下さい。実は東京都は,問題の設定が面倒な分,書き方・構成についてはかなり具体的な指示をくれています。この書き方・構成は,他の自治体受験の際にも非常に参考になります。以下ポイントを4つみていきます。

 

①「あなたらなどのように学習指導に取り組んでいくか」

これは,前回の記事でもみました。あくまで一人の教育実践者として何をしていくか,ということを書く必要があります。「○○について論ぜよ」と問題を課されている場合以外は,第3者の目線で書くわけではありません。したがって,特に方策を書いていく部分において,文末は「…を行い,~していく。」といった形になります。

 

②「志望する校種と教科等に即して」

この部分は自治体によって指示が異なります。東京都は,中・高は一括採用なのでこのような書きぶりになっているのだと思います。教科については,生徒指導の事例対応の場合には(基本的に)触れなくて良いことになります。

当然,想定する校種が変われば,学習内容,学習指導法,生徒指導の方法……様々な面で前提条件が変わってきます。書いている間,そのあたりのイメージを中途半端にしてしまうと,全体として統一感の無い小論文になってしまいます。論文の最初に設定を明記するのはもちろん,文章を書いている間も意識するようにしましょう。生徒指導の事例対応の場合,「中学2年生の女子生徒」といったように,あらかじめ設定が課されている場合が多いです。

 

③「具体的な方策を二つ挙げ」

①でみたように,自らが実践していくことを書いていくのであれば,その内容は自然と具体的になるはずです。小論文の構成のうち多くの部分を占め,そして小論文の核となるのは,この「方策」の部分になります。

東京都(1050字)の場合であれば,仮に問題文に書かれていなくても,2が原則です。他自治体は800字の場合が多いのですが,その場合も2が収まりが良いです(状況に応じて一つも可という感じ)。3つ以上書いてしまうと,それぞれの方策の内容が薄くなってしまい,伝えたいことが上手く伝わらない可能性があります。字数に換算すると,東京都が350字(10行)×2,800字の自治体の場合だと250~300字×2が目安です。

また,2つ書いておくと,⑴1つの方策がやや的外れであっても,もう1つの方策でなんとかカバーできる,⑵問題の論点が広範囲にわたっている場合,論点を分割してそれぞれについて対応策を書ける,といったメリットもあります。

※東京都は,1行が35字になっています。

 

「その方策を考える上での問題意識やまとめを明確に書き」

これが,一番イメージしづらい部分だと思います。

「問題意識」は論文の冒頭部分で,「問題提起」と言い換えておきます。実際に自分が見てきた子ども達の様子,社会の変化の状況,教育改革の動きなどを述べて,「~が(より)必要とされている」といったように,問題で問われている力・能力が今まさに学習指導(生徒指導)で必要とされていることを述べます。例えば,「教育実習では,発言を求めると積極的に意見を述べる生徒が多く見られたが,生徒同士で話し合うグループワークでは,自分の意見が互いに述べられるだけで,双方向的なやりとりが見られなかった」というような具合です(このあたりは,都合の良い生徒をつくっても良いです)。

なお最後には,「中学校の社会科の教員として,以下の~~に取組んでいく。」という風に設定を付け加えると分かりやすいです。

東京都で言えば6~7行(210~245字)が目安です。800字の場合だと,150~200字くらいでしょうか。

 

「まとめ」はそのまま「まとめ」なのですが,今後の意気込みのようなものを書いて締めると収まりが良いです。例えば,方策の内容を総括した上で,「生徒が他人への理解した上で自らの考えを構成できるよう,日々意識しながら学習指導に取組んでいく。」と述べるイメージです。

東京都の場合,3~4行(105~140字)が目安です。800字の場合だと,50~100字くらいになると思います。

 

ここまでみてきた,小論文の構成をまとめると,以下のようなイメージ図になります。

 

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以上,小論文の書き方や構成について,東京都の問題をベースにしながらみてきました。もちろん,この書き方・構成が常にベストであるとか,こうしなければ合格できないとか,そういったことは全くありません。あくまで参考として受け取ってください。

なお,小論文を書く際の最重要ポイントについては,【教採⑧】小論文 ⑴最重要ポイント - Momentを参照してください。

次は小論文対策の学習方法や東京都の対策方法について書いていきたいと思います。

ここまで読んでくださり,ありがとうございました。