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【社会科】新聞の読み方 ⑴新聞各社の考え方

この記事では,へんぷくの新聞の読み方や,普段読む際に心掛けていることを紹介しています。教員採用試験の時事問題の対策にも少しは役立っています。

 

 

昨日,高校生や他大学の学生の方と教育に関して色々とお話する機会があり,その中で「新聞」も話題に上がりました。今日は,普段へんぷくがどう新聞を読んでいるか,読む際に何を心掛けているか,を中心に二つの記事にわたって話していきたいと思っています。

また教員採用試験の一般教養では,時事問題がしばしば出題されます。また,面接で時事的な内容が問われる場合もあります。その対策にも資するような話にもしていきたいと考えています。

 

新聞各社の考え方

へんぷくの実家(私は実家暮らしです)では,朝日新聞を購読しています。初めにお断りしておきますが,私は朝日新聞の立場・考え方に対して常に賛意を示しているわけではありません。一応,是々非々の立場です。

 

さて,ここでさっそくキーワードが出て来ました。「朝日新聞の立場・考え方」という言葉です。新聞は「事実を報道する」というイメージが強く,それぞれの新聞社で報道・記事の中身はさほど変わらないように考えている人もいるかと思います。しかし,実際は各紙によって同じ事柄についてでも,その記事の内容,取り扱い方は全く変わってきます。

 

①記事の内容の違い

まずは,以下のリンクを開いてもらいたいと思います。

【安保法案 新聞見出しグランプリ】踊る「強行採決」一方、地球の裏側ブラジルでは… | 日本最大の選挙・政治情報サイトの選挙ドットコム

非常に分かりやすい例だったので,リンクを貼りました。一枚目の写真を見て下さい。安保法案が参議院の特別委員会で可決(2015年9月17日)された翌日の,各紙の朝刊一面を並べたものです。各紙とも,非常にカオスな委員会採決の様子が写されています。

経済関連の記事に重きを置く日本経済新聞以外は,一面の多くの部分が安保法案の記事を占めています。相当世間の注目を浴びていたことが伺えます。

さて,選挙ドットコムさんの記事とも被る点が多いですが,(日経新聞以外の)記事の中で特に着目してもらいたい文言(見出し)を抜き出します。

 

朝日新聞

 「怒号と混乱 虚をつき可決」

毎日新聞

 「安保法案採決 再び強行」

東京新聞

 「予定の質疑 行わず」

⑷読売新聞

 「野党 『不信任』など連発へ」

産経新聞

 「今日成立へ」

 

この文言だけで,各紙の「考え方」が見えてきます。

 

まず,朝日新聞ですが「虚をつき」という言葉の与えるネガティブなイメージが強いです。朝日新聞はこの時,明確に安保法案に対して反対する姿勢を見せていました。

毎日新聞は,「強行」(後にも出て来ます)というネガティブなイメージの言葉に,「再び」とさらに強調効果を持たせています。やはり,安保法案に対して反対する姿勢を見せています。

東京新聞は,「強行採決」という言葉を使うと同時に,やや小さい見出しになりますが,「予定の質疑 行わず」と書いています。これは,法律制定に際して手続きが正しく踏まれていないことを強調する効果を持っています。

読売新聞は,野党が内閣不信任案や大臣に対する問責決議案などの提出を「連発」していると表現しています。その隣には「成立ずれ込む」ともあり,野党が安保法制の成立を妨害している(読売新聞は安保法案に賛成している)ことを示唆しています。

最後に,産経新聞です。「今日成立へ」とあります。産経新聞は,安保法制が成立することが当然の結果であると考えているのが伺えます。

ところで,これは選挙ドットコムさんでも指摘されていますが,⑴~⑶では,採決について「強行採決という言葉の使い方をしています。「強行」というネガティブなイメージの言葉を用いて,今回の法案の正当性に疑問を投げかけています。逆に⑷,⑸ではこの言葉は使われれず,「可決」という言い回しになっています。

 

以上のように,新聞各社で驚くほどに同じ物事に関してでも,記事の内容が変わって来るのが分かります。今回は一面記事を見ましたが,各紙の社説を見ると,それはより明らかになってきます。

 

②記事での取り上げ方

これは,私が以前ツイートした写真です。1月1日に,朝日新聞・読売新聞・産経新聞日本経済新聞を読んだ(毎日・東京は買い損ねました…)ので,その中から切り取った記事を並べてみたものです。画質が悪いですが,右から朝日新聞・読売新聞・産経新聞です。ちなみに,日本経済新聞朝日新聞と同じくらいの大きさの紙面でした(写真を撮った時に記事があるのに気付いていませんでした…)。

 

 

毎年,総理大臣は国民に向けて「年頭所感」という,要は一年の抱負のようなものを1月1日に公表します。記事の分量からして,その新聞社と政権との距離感が伝わってきます。ちなみに産経新聞年頭所感の全文を紹介したのに加えて,

 

安倍首相と他2名の対談を見開き一面を使って掲載しています。他紙に比べて,現政権に近い印象を受けます(もっとも,時には批判的な時もあります)。

 

なお日本経済新聞は,経済政策を重視する現政権を支持する傾向が強いですが,その他の政治・外交面は比較的ニュートラル,むしろ政権に対して批判的です。(記事切り取れなくてごめんなさい)。

今回は,各社の新聞記事に掲載されている例を載せましたが,そもそも同じ事実であっても,新聞社によって掲載される,掲載されない,が分かれる場合もあります。新聞社によって記事上の取り扱いが大きく変わってくるのが分かると思います。

 

③幅広く情報を取る

 ここまで見てくると,普段どの新聞を読んでいるかで,自らのものの見方・考え方が大きく左右されるのに気づくかと思います(そもそも読んでいない人も多いですが)。おそらく,家で「○○新聞」を取っているという理由から,自然とその見方や考え方を無意識のうちに刷り込まれている人は多いはずです(自分も最近はそれを痛感しています)。新聞は確かに「事実を報道する」わけですが,その「事実」は光の当て方によって,大きく写し取り方が変わってきてしまいます。

 

そういうわけで,新聞を読む際は,色々な新聞社の記事を読むのがお勧めです。自分は,普段は朝日新聞を読んでいます(他の新聞まで手が回らない)が,年始や大きな政治上の出来事等があった際には,読むようにしています。様々な「事実」に対する光の当て方を検討してみることが大事です。

時折,「新聞の情報はあてにならない」というようなネットの意見を見かけることがありますが,組織として十分な裏付けを取り,何度も検討を重ねた上で記事にしている新聞社の記事と,ネット上の出所不明な記事・個人の意見(感想)とでは信用性が明らかに違います。新聞社の誤報に対する批判(と信用できないという意見)をしばしば見かけますが,多大な資源を投入して記事をつくっている新聞社でさえ誤報が時折発生するのに,ネット上の記事の方が誤報が少ないとどうしたら言えるのか,是非教えてもらいたいです。

 

自分は,どうすれば上手く,偏りなく情報を手に入れることができるか,日々苦戦しています。新聞だけでなく,雑誌や書籍にも手を出したり…でもなかなか時間も取れないですし…

今回記事を読んだ皆さんと一緒に,今後も考えていきたいと思います。

そして昨日,「新聞を読むのが楽しい」「よく社説を写している」と言ってくれた高校生の方,ありがとうございました,いい頭の整理になりました(笑)

 

本日はここまでです。ありがとうございました。

(次回の記事へ続く…)